着いた先は京都……ではなく、大阪。
修学旅行の計画段階で説明されていたけれど、先生はおさらいのように質問を投げかける。
「ここからバスで京都駅まで移動します。では、問題。京都には空港がありません。それはなぜですか?」
先生と目が合った。どうやら私が答えないといけないようだ。
少し考えた後、記憶を頼りに口を開く。
「京都は歴史がある街なので、景観を守るために空港が作られなかったんだと思います」
先生は満足げにうなずいた。ホッと胸をなでおろしながら、案内に従って進むと、バスが並ぶ場所にたどり着いた。
まだ数名しか到着しておらず、クラスメイトたちは思い思いに写真を撮ったり、地図を広げたりしている。
私は友達と話しながらバスの列へ。自由席らしく、みんな自然と男女で分かれて座っていく。
でも――私は話に夢中になりすぎて、気づいたときには座れる場所が限られていた。
一番後ろの席だ。
「あ、ここしかないじゃん。私、酔いやすいから窓側もらうね」
そういって友達は窓側の席に座り、もう一人の子もすぐ隣に着いた。私は、真ん中。仕方なく座ると、視線を感じて横を見る。
反対側の座席にはすでに男子が二人座っており、そのうち一人は、ちょっと気になる男子だった。
微妙な間。
「お前、まさかここ座るの?」
からかうような声に、思わずムッとした。
「…うるさい。ここしか空いてないの!」
まったく、なんでこうなるの――そう思いながらも、バスが動き出すと、すぐそこにいる彼の存在が気になって仕方なかった。
バスが動き出した途端、私は少し緊張している自分に気がついた。
すぐ隣に、気になる彼がいる。しかも、距離が近い。
できるだけ意識しないように、友達の方へそっと寄る。彼女らの会話に入り、気持ちを落ち着かせようとする。
すると――。
「ちょっと、狭いんだけど?」
友達が困ったように私を見る。気づけば、肩がぶつかるほど寄っていた。真ん中に挟まれた彼女は窮屈そうだ。
仕方なく、少しだけ戻ろうとした瞬間、背中に柔らかい衝撃が走る。
「――え?」
振り向くと、彼も少しよろけたような顔をしている。どうやら、彼も「近い」と言われてズレたらしい。
「こっちに来ないでよ」
「そっちこそ」
お互いに言い合いながら、さりげなく距離を取ろうとする。だけど、後部座席は広いようで狭い。避けようとしても、どこかで肩や腕が触れそうになる。
それならば――と、私は手荷物を真ん中に置いた。
「ここから先は立ち入り禁止だから」
彼は少し呆れた顔をしながらも、同じように自分のバッグを隣に置く。
「じゃあ、お前もこっちに入ってくんなよ」
まるで小さな国境線ができたみたいだった。でも、不思議と嫌な感じはしない。
むしろ、この空間の中で、彼の存在がやけに大きく感じられる気がする――。