あなたは鏡の中からの誘いに、強い違和感を覚えた。
陰陽盤の震えは確かに怪異の存在を示している。
だが、鏡の中に入るのは危険すぎる――
そう判断したあなたは、鏡に近づき、札を取り出した。
札に印を結び、鏡の表面に貼り付ける。
鏡は一瞬、波紋のように揺れ、少女の姿がぼやけて消えかける。
そのとき――
「……やだ……やだよ……!」
鏡の奥で、少女が泣いていた。
涙を浮かべ、顔をくしゃくしゃにして、あなたを見ていた。
一人になりたくないの……!
ずっと、誰も話してくれなかったのに……
あなたは、話してくれると思ったのに……
その声は、怨念ではなかった。
ただ、誰かにそばにいてほしいと願う、幼い叫びだった。
あなたは一瞬、手を伸ばしかける。
だが、札の力が発動し、鏡の中の空間が揺れ始める。
少女の姿は、涙とともに霧のように消えていく。
最後に見えたのは、泣きながら手を伸ばす少女の顔――
その表情が、焼き付くようにあなたの記憶に残った。
鏡は静かに光を失い、ただの鏡に戻っていた。
陰陽盤の震えも止まり、空気は静まり返っている。
あなたは保健室を後にする。
扉を閉めると、鍵が自然にかかる音がした。
保健室は、“封じられた場所”となった。
保健室の怪異、成功?
陰陽盤は沈黙したまま。
あなたは静かに息を吐き、次の怪異へと歩みを進める。
鏡の中の少女は、もう声を発することはない。
だが、あなたの胸には――
泣き顔の記憶が、焼き付いて離れなかった。
だが、ここで立ち止まるわけには行かない。次に行こう