「君の初任務だ。中学校を救ってほしい」
そう言ったのは、あなたの師匠であり、名高い退魔師、鬼影先生だ。
見た目は若々しいが、多くを見てきたかのような経験豊富な雰囲気もあり、年齢不詳の先生である。
あなたが初めて会った日からその姿に変わりがないようにも見える。呪われて歳をとらないだとか、人間ではないとか、そんな噂の絶えない先生ではあるが、あなたは先生に怪異から助けられた過去があり、そんな先生に憧れて、退魔師見習いとして日々を過ごしていた。
結界の張り方や、先生が捕獲した怪異を封印したり払ったり、いつもお手伝い程度の事しかできず、もどかしさを感じていましたが……。
だが、今回の依頼は違う。
先生は、あなたにこう告げたのだ。
「虚ヶ原中学校――怪奇現象が相次ぎ、生徒が怯えて次々と転校ししていっているそうだ。このままでは廃校の危機にあるという。そこでだ、お前にこの任務を任せようと思う。心配するな、今のお前ならできる」
その言葉に、あなたは胸を高鳴らせた。
ついに、自分の力で誰かを救える時が来たのだ。しかも、先生からも期待されているのだと。
虚ヶ原中学校に到着すると、校長室で待っていたのは、
どこか疲れた表情の中年男性――薄井校長だった。今回の依頼者でもある。
あなたの姿を見るなり、彼は一瞬だけ落胆したような顔を見せた。
鬼影先生を期待していたのだろう。
だが、すぐにその表情は切り替わり、深く頭を下げた。
「どうか、うちの学校を救ってください。」
校長の話によれば、校内では不可解な現象が次々と起こっているという。
鏡に映るはずのない影、誰もいない教室から聞こえる声、
夜になると勝手に動き出す机やミシン――
生徒たちは怯え、保護者からの苦情も相次ぎ、
転校者が増え続けている。
このままでは、生徒がいなくなり、学校を継続させることが難しい。最悪廃校だと。
「どうか、怪異を鎮めて、生徒たちを守ってほしい」
あなたは、陰陽盤を手に取り、静かに微笑んだ。
「任せてください。僕が、全部解決してみせます」
その言葉に、薄井校長はほっとしたような顔を見せた。
そして、夜が訪れるのを待った。
怪異は、闇の中で目を覚ます――
あなたの最初の退魔が、今始まろうとしていた。
夜が訪れた。
校門の前に立つと、昼間に下見した時とは違う空気を校舎がまとっているのを感じる。
あなたは直感した――ここには、何か“いる”。
歩みを進め、玄関の前に立つ。
薄井校長から渡された鍵を使って、扉を開ける。
ガチャリ…。
中に入ると、重い空気が体にまとわりつき、外よりも異様に低い冷気があなたを襲った。
まるで、誰かに見られているような――そんな気配が、背中を撫でる。
ポケットから、校長から渡された資料を取り出す。
それは、怪奇現象の“メモ書き”だった。
1階
保健室:鏡の前で誰もいないのに「こっちに来て」と少女の声が聞こえる。
鏡を見続けたまま動けなくなる生徒が多発。養護教諭もノイローゼで入院中。
被害者から何を見たのかは聞き出せていない。
図書室:誰もいないはずなのに足音と声が聞こえる。
司書教諭が確認したところ、ひとりでにページがめくられる本を目撃。
「ない……ない……」と何かを探す声を聞いたという生徒の証言もあり。
1年2組(空き教室):現在使用されていないが、授業中のような声が聞こえる。
隣の1組と3組の生徒が怯え、泣き出す事例が多発。
近く、1組と3組も使用禁止の検討がされている。
2階
理科準備室:赤ん坊の泣き声が聞こえるという証言あり。
棚には胎児のホルマリン漬けの標本が保管されている。怪異との関連は不明。
音楽室:誰もいないのにピアノの音が響く。
閉じ込められた生徒の証言によると、勝手にドアが閉まり、ピアノが鳴り止むまで開かなかった。
3階
美術室:毎晩、描きかけの絵がキャンバスに現れる。
家庭科室:ミシンが勝手に動いている。誰かがぬいぐるみを作っているようだが、姿は見えない。
※3階では今のところ被害者は出ていない。
資料を閉じ、あなたは静かに陰陽盤を掲げる。
盤面が震え、光を放つ――怪異の気配が、すぐ近くにある。
ここは1階。
保健室、図書室、1年2組(空き教室)。
――どこから行きますか。